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地図と比喩で楽しむ、村上春樹作品

[雑学・豆知識]  2014年4月18日

村上春樹さんの短編小説集「女のいない男たち」が18日発売されました!
昨年4月に刊行された長編小説から1年ぶり、短編集としては9年ぶりということで、都内の有名書店では深夜のカウントダウンイベントが開催されたりと大変盛り上がったようです。

長年、村上さんの小説を読み続けてきた筆者も、カレンダーに印をつけて一人カウントダウン。この日を待ちわびておりました。この週末じっくり読もうとワクワクしております。

さて、春樹作品の魅力はというと、読者諸氏にとってそれぞれあると思いますが、わたくし筆者にとっては この2つ。

  • 独特のたとえや比喩表現
  • 物語の舞台めぐり(地図スタッフの筆者としては、もちろん地図上で!)

村上春樹さんのたとえや比喩は、思いつかないようなユニークさ、軽妙さ、巧みさがあり、感心したりにんまりしたり、咀嚼(そしゃく)するのに時間がかかり放心してしまうことも!
各所にちりばめられたこうした表現に出会うのは大きな楽しみの一つです!

筆者の心に残る比喩表現、独断と偏見ベスト5

  • 「新月の夜は、盲のいるかみたいにそっとやって来た」
    『図書館奇譚』より

  • 「漆喰の壁には老人斑のような宿命的な染みがついていた。いるかホテルだ、と僕は思った」
    『ダンス・ダンス・ダンス』より

  • 「電車は混んでいて、おまけによく揺れた。おかげで夕方彼女の部屋に辿りついた時には、ケーキはローマの遺跡みたいな形に崩れていた」
    『蛍』より

  • 「ウェイターがやってきて宮廷の専属接骨医が皇太子の脱臼をなおすときのような格好でうやうやしくワインの栓を抜き、グラスにそそいでくれた」
    『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』より

  • 「玄関マットか何かになって一生寝転んで暮らせたらどんなに素敵だろうと時々考える。しかしやはり玄関マットの世界にも玄関マット的な一般論があり、苦労があるのだろう」
    『タクシーに乗った吸血鬼』より


なんともユニークです。
最後の「玄関マット」は他の小説津やエッセイでも何度か形を変えて登場しています。
気になった方は 他の物語、文脈での「玄関マット」を探してみて下さいね。

もう一つの魅力、物語の舞台めぐり

小説に限りませんが、好きな物語の舞台に身を置いて何か感じてみたいって思ったことはありませんか?
村上さんの物語には実在する地名がたくさんでてきますし、丁寧な街の風景描写を頼りに 出向いてみたくなります!

とはいっても、村上さんの物語は全国各地、世界へ広がっています。
自分の生活圏から遠い場所は、気軽に赴くことままなりません(お金もかかるし仕事も休めない)

そこで地図の上で、物語の舞台に行ってみるのです。

筆者がはじめて村上さんの物語の舞台を空想し地図を眺めてみた時はいつだったか。
思い起こせば〇〇年前・・・

村上さんの読者になって間もないころ、次の短編小説に出会いました。

「チーズケーキのような形をした僕の貧乏」
Photo チーズケーキ_2 by dreamcat115

これまた、面白い例えです。

チーズケーキというのは、登場人物の結婚したばかりの若い夫婦が初めて家を借りた土地の形状のこと。時間はあるけど金はない、という若いカップルでした。

地名は出ていないのですが、いろいろな断片情報(村上さんのエッセイや書籍の書評など)から地域、駅を絞り込み、推測していきます。
次のような風景描写が冒頭にあるのですが、ここがそうなのかな!?と目星をつけて一人満足したものでした。

…「三角地帯」の両脇には二種類の鉄道線路が走っていた。ひとつは国鉄線で、もうひとつは私鉄線である。その二つの鉄道線はしばらく並走してから、このくさびの先端を分岐点として、まるでひき裂かれるように不自然な角度で北と南に分かれるのだ。…
『チーズケーキのような形をした僕の貧乏』カンガルー日和に収録

三角地帯と思われる場所(クリックするとYahoo!地図にジャンプします)


懐かしいです。

今では、熱心なファンの方々のブログなどで、たくさんの情報交換があり、公開されています。
お目当てのスポットを自分で探せなくても、その地図や現地写真でたどることができます。
ベストセラーとなった「1Q84」では、出版社公式の本を片手に楽しめる「1Q84マップ」なるものも登場しました。

便利な世の中になったものです。

さて、この新刊をきっかけに読んでみようかと思われる方、また(過去の作品を)読み返そうという人も多いのでしょうね。
書店では、長編、短編、紀行文、エッセイと様々な村上作品が並んでいます。あなたはどの本が気になりますか。
本を紐解かれる時、地図を片手に楽しんでもらえれば 地図スタッフとしてはうれしいです。
(文:池田)


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