とある日の昼下がり、わたくしYahoo!地図ブログの編集を担当している「かた」と、Yahoo!地図の地名を担当している「OKB」さんは、オフィスそばのカレー屋さんにいました。
これはカレーではなく、住居表示の看板
カレー屋で地名ネタを発掘!
ランチのカレーを食べながら、ブログのネタのことで話が盛り上がり、話題はさらにOKBさんお得意の
地名ネタのことに。
※突然ですがここからは名古屋弁の会話も混ぜてお届けします。わかりにくい箇所もありますがご容赦ください。
かた 「OKBさんは地名ネタが豊富だで、ブログになにかマニアックなネタ提供してちょーよ。」
OKB 「マニアックなネタね~…、そうだ! 廃町は!? 」
かた 「廃町? なにそれ? 廃村のこと? 」
OKB 「いや、ほんとは廃町とは言わんのだけど。東北のほうの鉱山で、高度経済成長のころに住居表示された町があるんだわね。でも、いまでは人っ子一人住んどらんのだわ。」
かた 「人が住んどらんのに、住居表示だけ残っとるってこと?」
OKB 「そうなんだわね~! どえらいおもしろくない!? 」
かた 「おもしろい。おもしろいけど、なんでそんなこと知っとんの?」
OKB 「10年くらい前に全国の住居表示されとる町を網羅する作業をしとったんだけど、その時に「住居表示されとるのに人がいなくなって消滅しとる町」があることが判明したんだわね。」
当時の松尾村役場(現八幡平市)に問い合わせたところ、「以前は住宅もたくさんあったが今は何も残っていない。図面は・・・何十年も前の古いものならあるかもしれません。」と言って、図面を探して送ってくれたとのこと。
なんとマニアックな地名ネタ!
ちなみに「住居表示などの載った図面を取り寄せる」ということは以前からしょっちゅうやっていまして、詳しくは
「雨の新宿 小銭と冷たい目 ~ 住所データ整備秘話 ~ (YOLPブログ)」に書かれていますので、ぜひお読みください。
話を戻しまして、高度経済成長期に住居表示されたほどの大きな町が、今ではすっかり廃墟となり、人っ子一人住んでいない。それでもいったん設定された町を廃止にしてはいないそうで、今もその住所は存在しているとのこと! 素晴らしく好奇心のそそられるお話ではないですか。
住居表示された巨大都市の廃墟は"北の軍艦島"と呼ばれていた
カレー屋から戻った私は、早速その
「住居表示されている鉱山の廃墟」を調べてみることに。
"東北 鉱山 廃墟” で検索したところ、あっという間に出てきました。
かた 「OKBさん! ここだよね? 住居表示されている廃墟の町 "松尾鉱山"!」
OKB 「そう、そこ! そこだがね。」
かた 「こ~んな廃墟が、昔は住居表示されとったんだねぇ。驚きだわ。」
かつては硫黄を産出し、東洋一の規模を誇っていたという「松尾鉱山」。そこで働く人々が暮らした町が、かつての「松尾村(現八幡平市)緑ガ丘」です。
OKB 「かたさん! 資料室あさっとったら当時送ってもらった図面が出てきたよ! 」
と、OKBさんが探し出してきた図面から、今の
Yahoo!地図と重ねた絵を作成してみました。
「松尾村(現八幡平市)緑ガ丘1丁目~5丁目」 (クリックすると大きな画像が別ウィンドウで開きます)
※地図上にオレンジ色で表現されている建物は、今も現地に残る「緑ガ丘アパート(通称)」
かた 「今残っとる緑ガ丘アパート以外にもどえらいぎょうさんの建物があったんだね~!」
OKB 「こんなちっちゃい建物のひとつひとつに住居番号※がついとったとは、なんだか感動だね~。」
※住居番号(じゅうきょばんごう)は、一定の地域内における建物の位置を示すために規則に従って建物に付与される番号。地番とは異なります。
「緑ガ丘」の全盛期は昭和35年ごろ。当時は1万人以上の人口を誇り、最新鋭の施設を備えたアパート、学校、病院などが整備さていました。
取り寄せた資料図面にも、学校のほかに保育園や銀行、団地ごとの銭湯や消防署までが記載されており、まさに一大都市と言えますね。
日本の近代化や高度成長を支え、繁栄を誇った松尾鉱山も昭和47年ごろに閉山となりました。
いま、緑ガ丘の地図はどうなっているのか?
では、この緑ガ丘1丁目~5丁目までの丁目界を、現在の
Yahoo!地図に重ねてみましょう。
(クリックするとYahoo!地図にジャンプします)
ただぽつんと鉱山の後処理施設があるだけで、なんともさみしい感じですね。
廃墟となっている緑が丘アパート群
Photographed by Kernel
かた 「なんか緑ガ丘に行ってみたくなったがね~。」
OKB 「行ってみたいね~。」
かた 「行こうか! そしたら"行ってきました~!"ってブログにUP・・・したらいかんがね! 廃墟の中に入ったらいかんわ。」
もちろん、廃墟や私有地へ断りなく立ち入ることはNGです。でもこれだけの建造物ですから、きっと県道からもよく見えることでしょうね。日本全国、住む人がいなくなり廃れた村や町は数あれど、これほどまでに落差の激しい町はきっとここだけなのではないでしょうか。
今では広大な敷地に、崩れ落ちそうなアパートが数棟、当時の面影をしのばせています。
お近くをお通りになった際は、「ここが緑ガ丘か」と思いをはせてみてください。もしかすると当時のにぎわいを感じることができるかもしれません。
(文:片川 原案:OKB)
・廃墟などの建物や敷地内には、許可無く立ち入らないようにしてください。
・廃墟の周辺はガラスなど危険物が散乱していることがあり、けがをする恐れがあります。自己責任において行動してください。