梅雨の晴れ間に、太陽のありがたみを感じるこの季節。お天気の良い日に公園や里山などを歩くと、あちこちでカサカサという小さな音が聞こえます。草むらでは『ニホンカナヘビ』、落ち葉の下には『ニホントカゲ』が多いでしょうか。
どちらかというと目立つのは『ニホンカナヘビ』の方で、『ニホントカゲ』は半地中性ということもあり、なかなか全身を見ることはできないかもしれません。
そんな身近なようで身近でもない、微妙な存在である『ニホントカゲ』ですが、実は2012年に新種が記載されました。北海道から九州まで同種が分布していると思われていましたが、
東日本のものは別種であるということで、
『ヒガシニホントカゲ』と命名されました。
生物・生態系環境研究センター
「ニホントカゲの中から発見された新種「ヒガシニホントカゲ」の記載」(外部リンク)
以前から同じ『ニホントカゲ』でも、西日本と東日本では性質にやや違いがあることは認識されていました。
“とかげ”と言えば、西日本では『ニホントカゲ』、関東あたりでは『カナヘビ』の名前がよくあがることからもわかるように、東日本の『ニホントカゲ』はおとなしく目立たない存在だったように思います。
今回、DNAや頭部のウロコの形状から別種であることがあきらかになったことで、その認識の違いが実証された形になったのではないでしょうか?
Yahoo!地図で見るトカゲの分布
参考資料:「ニホントカゲの中から発見された新種「ヒガシニホントカゲ」の記載」より
地図を見ると、人間社会の東西わけと微妙に似ていて、おもしろいですね。違うのはどうやら鈴鹿山脈から紀ノ川にかけてが分布境になっているところでしょうか。もうひとつ、この地図を見て、日本の地理に詳しい人なら、
中央構造線と重なる部分があることに気づくでしょう。
中央構造線を重ねてみると……
地図には、伊豆半島から伊豆諸島にかけて、『オカダトカゲ』という種類が分布していることも描かれています。これも見た目は『ニホントカゲ』とほとんど同じなのですが、別種です。
『オカダトカゲ』が別種なのは、伊豆半島が大昔は島で、大陸移動により本州とぶつかった証拠と言われています。ならば東と西で異なるトカゲの由来はいったいなんでしょう?
【閲覧注意】クリックすると画像が拡大します
上:ヒガシニホントカゲ(しま模様)下:ニホンカナヘビ 場所=名古屋市庄内川河川敷(こちら)
どう見ても同じくらいの大きさのトカゲですから、どちらかが勢力を増して東西で分かれているわけではなさそうです。大昔に日本列島が二つに分かれていたころの名残なのだろうかと考えると、小さなトカゲも興味深く見えてきませんか?
(文:安居)